2008年12月30日

本のコト

2008読書ベスト10

一応今年もやっておきましょう。
まずは新刊のなかから。例によってコメント無しの手抜き。

1.宿屋めぐり 町田康
宿屋めぐり

2.ダンシング・ヴァニティ 筒井康隆
ダンシング・ヴァニティ

3.新世界より 貴志祐介
新世界より 上新世界より 下

4.カラスの親指 道尾秀介
カラスの親指 by rule of CROW's thumb

5.テンペスト 池上永一
テンペスト  上 若夏の巻テンペスト 下 花風の巻

6.ザ・ロード コーマック・マッカーシー
ザ・ロード

7.告白 湊かなえ
告白

8.赤めだか 立川談春
赤めだか

9.夜 橋本治
夜

10.限りなき夏 クリストファー・プリースト
限りなき夏 (未来の文学)

次点は『聖女の救済』東野圭吾、『ゴールデン・スランバー』伊坂幸太郎あたり。
読もうと思っていて年内に間に合わなかったのは『神獣聖戦Perfect Edition』山田正紀、『モダンタイムス』伊坂幸太郎、『ラットマン』道尾秀介、『ファミリー・ポートレイト』桜庭一樹あたり。
ここら辺は年明けに順に消化したい。

では、旧作から今年読んだものの中で10個選ぶと。
流れる/幸田文
ハローサマー、グッドバイ/マイクル・コーニィ
詩人と女たち/チャールズ・ブコウスキー
ソラリス/スタニスワフ・レム
きりぎりす/太宰治
ねにもつタイプ/岸本佐知子
月と六ペンス/サマセット・モーム
スプートニクの恋人/村上春樹
四畳半神話大系/森見登美彦
人のセックスを笑うな/山崎ナオコーラ

うーん、なんかベストテンって感じにならないので順位はご勘弁。
トータルで130冊ほど読めました。

おまけで期待ハズレ、というかかなり期待して読んだにも関わらず今の自分にはもひとつ合わなかったもの。
乳と卵/川上未映子
Self-Reference ENGINE/円城塔
虐殺器官/伊藤計劃

ここら辺はまだ楽しめたのですが、

シカゴ育ち/スチュアート・ダイベック
ベルカ、吠えないのか?/古川日出男
ハル、ハル、ハル/古川日出男
聖家族/古川日出男
キャラクターズ/東浩紀+桜坂洋
切れた鎖/田中慎弥

あたりはツライものが。
というわけで、一番一生懸命に読んだのに全然ハマらなかった古川日出男に対して、今後どのように接していけばいいのでせうか。

本のコト

『新世界にて』貴志祐介

新世界より 上新世界より 下
『新世界にて』貴志祐介

おー、なんとか年内に読めたぞ。
評判を聞きつけ、夏頃には入手していたのだが、後回しにしているうちにSF大賞をお見事受賞。
各種ミステリ系のベストでもベストテン内に迫る評価を得て、今年の話題本であることは間違いなく、読んでみて確かにその評価に頷ける出来だ。

上巻の少年少女冒険小説展開を経て、下巻のハラハラドキドキの怒濤の展開、さらに結末での「世界の秘密」の解明に至るまで、ストロングタイプのSFでありながら、SFということをあまり認識せずとも軽快に読み進めることができる間口の広さも持っている。

ぶ厚いながらも長さはそれほど気にならない。
未読の方はこの年末年始に是非。

2008年12月16日

本のコト

『告白』湊かなえ

告白
『告白』湊かなえ
2008年度このミス4位、つうか文春1位なのか。
面白いですよ。最初ちょこっとだけ読もうと思ってたらぐいぐい読まされた。
力があるね。

読後感が良くないっていうので、構えつつ読んだのだがそれほどでも。
ま、そこら辺は倫理感の問題というかなんというか。
むしろ個人的には例の病気の扱いの方が気になったけどね。
でもああ書かないとこの小説自体が成立しないんだよなあ。

視点切り替え型の小説は同じ場面とかを何度も繰り返すのでうんざりしてくることがあるのだけど、うまく処理がしてあって気にならない。
余分なことはあまり書いてないというか。

2008年12月12日

本のコト

『カラスの親指』道尾秀介

カラスの親指 by rule of CROW's thumb
『カラスの親指』道尾秀介

「このミス」はじめ年間ベスト類が出始めたので、その中から面白そうなものをピックアップしてポツポツ読み始めている。
このところそれらベストテンの常連となりつつある道尾秀介の名は確かに記憶にはあったが、自分の射程距離には入っていなかった。
今年の「このミス」のベストテンに2作品がエントリーされているので俄然興味を持った。
まずその一作『カラスの親指』から読んでみた。

コンゲームものということで、好きなジャンルということもあり、それなりに期待して読み始めたが、あっという間に引き込まれ、作者の手のひらの内にゴロゴロ転がされ、後味よく読み終えることができた。
テンポもいいし、会話も軽妙で文体もいい。
細かい所にも目配りが効いている。
直前に『流星の絆
』を読んでいたのだけど、リーダビリティは優れているし読んでまあ面白いとも思うのだが、なにかしらペラペラなイメージだなあってのが東野圭吾で必ず感じることなのだが、道尾にはその不満はない。

よく考えれば(考えなくとも)かなり無理がある話なのだが、世界が反転しつつキレイに収束していく様は非常に気持ちが良かった。

こりゃ他も読まんといかんねえ。

2008年11月29日

本のコト

『テンペスト』池上永一

テンペスト  上 若夏の巻テンペスト 下 花風の巻
『テンペスト』池上永一
池上永一はいつかは読まなきゃいけないなあ、と思いつつこれまで未読だった作家。
『シャングリラ』とか『レキオス』とかその都度興味を惹かれてきたのだけども、そのままになっていた。
この『テンペスト』も発売当初から話題作となっている。
思い切って先にこちらから読むことに。

おお、こんな感じなんだ。
まあ確かに高低差の激しいジェットコースター的展開の小説である。
滅びゆく琉球王朝の史実を背景に縦横無尽に物語が進行する。
その史実に馴染みがない読者であるほど、この小説をよりファンタジックに受けとめて、絢爛豪華な宮廷世界の描写に翻弄されつつ登場人物達の動向に一喜一憂できるかもしれない。
しかしながら多分にマンガ的な描写・表現が一度気になってしまうと、書き込みの物足りなさや薄っぺらなロマンスや借り物の設定等が透けて見えてきてしまう。
そこをエンタメと割り切って読めば十二分に楽しめるし、そういう意味ではかなり映像作品向きと云えよう。

寧温/真鶴役に一番誰がハマるのか、さっきから考えているのだが最近の女優に疎いし思い浮かばん。
黒木メイサとかかなあ。(もうすぐ川島芳子役やるみたいだけど。)

2008年10月27日

本のコト

『夜』橋本治

夜
『夜』橋本治

5編からなる短編集。
最初の4編は、男が家からふいにいなくなり、時を経てふらりと戻ってくるという情景を共通して描く。
理由は明確に説明されないが、小説としてきちんとそこに描かれている。
「yom yom」なんかや他の中間小説誌とかで割とありがちな類の話ともいえるんだけど、橋本治が書くと、やはり別物になる。
エッジがキンキンに立って、心に痛いほどだ。
最初の「暮色」が鮮やかで、個人的には好き。

残りの一編は、ゲイとゲイを明確に拒まないノンケの男とその間で空回りする女の話。
「好き」ということのそれぞれにおける意味の差を突きつけられて、我々は何を思えばいいのだろう。
孤独、を強く感じる、まさに「夜」な話。

2008年10月26日

本のコト

『聖女の救済』東野圭吾

聖女の救済
『聖女の救済』東野圭吾
『容疑者Xの献身』に続くガリレオシリーズ最新長編。
やあ、これが映画第2弾になるのかなあと思いつつ、旬のうちに読んでしまおうと読み始めたら、あっという間に読み終えてしまった。
さすがのリーダビリティ。
淡泊な感じは相変わらずで、映画にするには地味な話だが、まあ『容疑者X』にしたところでそんな派手な話ではないわねえ。
どの女優がゲスト役になるのか、と考えながら読むのも一興かも。

トリックはまさに「ありえない」もので、意味ありげに撒き散らされた伏線がそう繋がるかあ、と感心したが、湯川の言う「虚数解」っぽさをもっと醸し出してくれたら良かったのになあと贅沢な言い分。

好き嫌いはあるだろうけど、このぐらいのクォリティを保ったシリーズに対して他に文句はない。

2008年10月19日

本のコト

『エドガー賞全集―1990-2007』ローレンス・ブロック他

エドガー賞全集―1990-2007 (ハヤカワ・ミステリ文庫 エ 6-1)
『エドガー賞全集―1990-2007』ローレンス・ブロック他

現代ミステリ短編を読むのは久しぶりかも。ミステリマガジンとかもちゃんと追ってないしね。昔はこれでも「EQ」とか買ってたんだがなあ。
で、これは権威あるアメリカ探偵作家クラブ賞であるエドガー賞の1990年以降の最優秀短編賞受賞作を収録したお得な一冊。
冒頭のウェストレイクで、個人的には久々にドートマンダーに再会。
気分良くなってちょこちょこ読み進める。

一番読み応えがあるのは、おそらくトム・フランクリン「密猟者たち」(1999)だろうね。
マイ・ベストはジェイムズ・W・ホール「隠れた条件」(2006)かな。メリハリの効いた話だ。
チャールズ・アルダイ「銃後の守り」(2007)もありがちながら、余韻が残る。
ブロックのケラーもの2作は、さすがのリーダビリティ。

まあ、好き嫌いはあれど、1000円ならオトクといえる内容でしょう。

2008年10月18日

本のコト

『聖家族』古川日出男

聖家族
ここのところ出た読みたい本が全部大長編でどうにもこうにも。
古川日出男は昨年から今年にかけていくつか読んだものの、いまひとつしっくりこない。
しっくりこないと言いつつも読み続けているからには、なんかひっかかるところがあるんだろうけど、それがはっきりしない。
だからこの新作大長編に手を出すのは躊躇したのだが、世評も高いようだし今度こそ気にいるかもしれないと、思い切って読み始めた。

いやあ、やっぱり合わないわ。
波長がちがうのかなあ。独特の文体のリズムにまったく乗れないんだよね。
だから読んでて全然気持ちよくない。
作者自身は書いてて随分気持ちいいんだろうなあとは思うのだが、その分こちらが冷めてしまう感じ。
途中からは読むのが苦痛になり、ずいぶん速読をした。
だから作品についてはまったく評価自体をすることができない。最後までちゃんと読んだけどね。

まあそういうこともあるんだろう。
ごめんねごめんねー。

2008年10月 8日

本のコト

『リアルのゆくえ  ──おたく/オタクはどう生きるか』大塚英志+東浩紀

リアルのゆくえ──おたく オタクはどう生きるか (講談社現代新書 1957)
『リアルのゆくえ  ──おたく/オタクはどう生きるか』大塚英志+東浩紀

副題はそのままこの論者二人のことを指すとも解釈できる。
ひらがな表記とカタカナ表記にひとつの世代差を見出す態度が大塚にはあるわけだが、「オタク」であろうが「おたく」であろうが、僕にとっては微妙な距離感のある言葉である。

自分を振り返った場合、〈オタク〉と云われてもさほど違和感のないライフスタイルで青春期を過ごしてきたと自覚はしているのだが、この言葉が一般化した80年代末、宮崎事件が起きたあの1989年夏に、当時としてはかなり大規模な〈オタク〉の祭典のうちのひとつであった筈のSF大会のスタッフを経験したのを最後にそうした所からひとまず距離を置くようになる。

だから世間で〈オタク〉が注目を浴びるようになった時には、既に自分をその対象として認識しておらず、部分的にはある種のシンパシーを感じつつも全体としてはどこかしら他人事のような意識の仕方をしていた。
微妙な距離感というのは、そういうことである。

余談ながらもうひとつ個人的なことを重ねると、自分には二次元美少女キャラに対する拭いがたい苦手感があって、それを奉る傾向にあるとされる〈オタク〉のイメージを自分に重ね合わせることに対する偏狭な嫌悪感といったものがあることを告白しておく。

だから90年代以降のアニメ、ゲーム、ラノベへの関心も薄いし、幼き頃から培ったそれ以前のそうした対象への知識との格差は大きい。
当然、以降の〈オタク〉周辺の状況にも疎く、このあたりを取り巻く代表的な論客であろうこの二人の著作も、ほとんど追いかけてこなかった。
だが、このところなんとなく新書を中心に代表作を数冊ずつ読んでいたところで、ちょうどこの本が出た。

まさにこれを読むために準備をしていたかのようなもんだが偶然に過ぎない。
仮にそうだとしても果たしてこの本にそんな準備をするだけの価値があったのかなあという感想ではある。
とはいえ、この二人の思想背景に対するある程度の準備なくまったく白紙でこの本を読んでも、内輪話というかサークル内の言説といった部分も多く、なんのことやらわからないということになりかねない。
でもひょっとしたら実はその方が本質が見えやすいのかも知れないけどね。

ものすごく素朴な感想を云うと、「世代論議」ってみっともないよなあ、ということ。これ、改めて感じた。
論議をするときに、相手の世代を問題化するってのはそれほど有効なことなんだろうか。
自分が属する世代を非難されたところで、その事実を変えることはできないわけで、そこから不毛でない何かが産まれる可能性は限りなく低いように思う。

たとえば、2ちゃんとかでよくみかける「ゆとり」とか「ゆとり世代」とかいう蔑視語がとてつもなく嫌いだ。
「ゆとり教育」が正しかろうが間違っていようが、その世代が恣意的に選び取ったものでは当然ないわけで、そうした因果関係をまったく飛び越え自らの根拠のない優位性を誇る態度はまったくもって唾棄すべきものだと思っている。

自分の世代はああだったこうだったという昔話と、それに比べて君らの世代は、という世間一般によくある論調が、ここでの大塚の場合、東個人に向けた苛立ちとして表面化されているようではあるものの、でもやっぱり世代論に収斂されてしまうように読める。

世代間の論議が目玉であるこの本に対し、これがいささか的外れな感想であろうことは薄々感じるが、このまったく噛み合わないような、それでいて微妙にじゃれ合い的な(プロレス的な)雰囲気を感じなくもない不思議な対談本を読んだ感想としてはまあそんなところである。

読む前の予想に反して、あくまでどちらかといえばだが東に若干肩入れをしている自分にちょっとびっくり。

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